参勤交代こそ江戸時代のお引越し?意外と知らない引越しに関する歴史
「引越し」というと、今では引越専門業者に頼むのが当たり前となっていますが、かつては、一般の運送会社が業務の一部として取り扱うのみでした。現在のような引越専門業者が誕生したのは、今から50年前くらいのこと。それまでは、近所のトラックを持っている人が手伝ったり、軽トラなどを借りて運んだりするのが主流でした。
今回は、引越しのルーツから、意外と知らない引っ越しの歴史について紐解いていきます。
もともと「引っ越し」のルーツは平安時代にまでさかのぼります。平安時代の貴族たちが昇進すると、それにともない従者なども増えるため、小さな家から大きな屋敷へと移り住んだのですが、それを「引き越し」と呼んでいました。これが、今の引っ越しの語源になったと言われています。
江戸時代に入ると、各藩の藩主を2年毎に江戸に出仕させる「参勤交代」が始まります。
これは主に江戸幕府を守るための「軍役」としての目的がありましたが、反目する藩主が現れにくくするための財政圧迫政策でもあったのです。兵役として従う武士たちを数多く引き連れていかなければいけませんし、藩主である大名のための医師や鷹匠など、江戸で過ごすための人材および専用の風呂釜を含む多くの品々を持って行きました。
これはもはや、莫大な費用がかかる大規模な「引っ越し」ですよね。
この大名行列の規模は石高数で決まっていたようで、例えば100万石の加賀藩などは最大で2500人~3000人もの人が駆り出されたといいます。大名行列はその壮観な様から農民や町人の見物客が列をなすなど、一大行事として市民にも知られるようになっていきました。
また参勤交代は、引っ越し費用や引っ越し日数を考えると史上最大規模の引っ越しだったということが分かります。例えば、77万石の薩摩藩(鹿児島県)・島津家の場合、行列の規模は約1900人、道のりは440里(約1730キロ)、日数は約50日、費用は1万7000両(現在のお金に直して約22億円)という記録が残っています。
このように参勤交代は、その国(県)を上げての大きな引越だったということが分かりますね。
昔の日本は故郷を離れるということがなく、生まれた家で生涯暮らすことも少なくありませんでした。しかし、交通が発達してきた江戸時代になると、江戸や大阪などの都市部では「宿替え」「家移り」といって庶民がよりよい暮らしを求めて引っ越す人も出てくるようになりました。
当時の引っ越しは、「裸貸し」といって、引っ越す時には家財道具をすべて売り払い、引越し先の古道具屋で家具を調達するのが主流で、引っ越しは手軽だったようです。
また、江戸時代には、引っ越してきた人が、ご近所さんに「末永くおそばに」という意味を込めて「引越そば」を振る舞うのが習慣になっていました。これが、現代でもタオルや洗剤などを持参し、引越しの挨拶をする儀礼につながっています。
第二次世界大戦後、日本は急速な戦後復興により世界有数の経済成長を遂げました。
1960年代には池田勇人内閣による「国民所得倍増計画」によって、国民は豊かになり「マイカー・ブーム」が起きました。このマイカー・ブームによって、自由に移動を楽しむことができるようになったのです。
1970年代に入っても日本の好景気は続き、建設国債を発行し、その資金を道路建設などのインフラ整備に投入しました。同時期に、田中角栄首相(当時)が打ち出した「日本列島改造論」によって高速道路が発達、運送や流通業界は大きく変革しました。日本の大動脈となった高速道路は都市と地方を結び、地方から都市部へと人口が流入するようになり、日本は大移動時代を迎えます。
また、経済成長を支えた企業では、社員を適材適所に配置するため、地方の支社にも有能な社員を送り込みやすくなりました。これにより「転勤族」という言葉も登場しました。
こうして日本では「引っ越し」というものがより身近なものになっていったのです。
1973年に起きた第一次オイルショックは運送業界に大きな打撃を与えました。そこで運送会社は、それまで片手間に行っていた引越業務を本格化しました。これまでのように搬出搬入だけを請け負っていた業務に、梱包やダンボールなどのサービスを加えて、専門的なサービスに特化し始めました。
昭和50年代に入ると、引っ越し専門の業者が中小を含め数多く立ち上がり、テレビCMなどで宣伝するようになると、引っ越しは「商品」として一気に普及。サービスなども年々充実し、現在の引越し業者のサービスが確立されていきました。
時代とともに変化してきた引越しの考え方と、日本社会の変化によって誕生した引越し専門業者。
最近ではAIを使って引っ越し需要を模索するなど、引っ越し業者もどんどん進化しています。
時代に合わせて変化していく、引越サービスに注目してください。
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