初めての一人暮らしでお引越し。その前に!トラブルにならないよう賃貸借契約を理解する
賃貸借契約・退去時のトラブルに巻き込まれることが多いのが、初めての一人暮らしで引っ越しをした20代前半の若者たちです。実際、賃貸借に関する消費生活相談の約20%が20歳未満および20代の人だといいます。また、成人年齢が18歳に引き下げられたことで賃貸借契約において保証人等のトラブルが増えているようです。そこで、よくあるトラブル事例から、賃貸借契約に関するトラブル防止法を紹介します。
2022年4月1日、民法の改正により成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これにより、18歳でも親の同意を得ず、賃貸借契約を締結できるようになりました。一見、若者でも賃貸物件が借りやすくなったようにも思えますが、一方で契約や解約時にトラブルが増える要因にもなっています。
民法の改正前と改正後についてまとめると以下の表のようになります。
2022年3月31日まで | 2022年4月1日以降(民法改正後) | |
---|---|---|
成人年齢 | 20歳 | 18歳 |
契約 | 未成年者(19歳以下)は親など法定代理人の同意が必要 | 18歳以上であれば、本人の意思で契約を結ぶことが可能 |
解約 | 未成年者であれば、後から取り消しが可能 | 18歳以上の場合、後から契約を取り消せない |
この表からもわかるように、成人と未成年の責任の重さがかなり違うことは明らかです。引越しをして若者が部屋を借りる場合には、賃貸借契約書や重要事項説明書などをよく読み、内容をきちんと理解することが大切です。その作業を怠ってトラブルにつながるというケースが増えているようです。
ちなみに、「18歳以上であれば、本人の意思で契約を結ぶことが可能」となっていますが、賃貸借契約には審査があるので、18歳になれば誰でも契約を結べるという訳ではありません。
それでは、実際にどのようなトラブルが報告されているか、実際に国民生活センターで報告されている事例を見てみましょう。
●事例① 入居前に解約を申し出たが返金されない
10代の娘さんをもつ保護者からの相談。
娘が賃貸マンションへ引越すことになり、仲介業者に出向いて娘自身が契約書にサインし、保護者は保証契約書にサインして仲介手数料、敷金(家賃1カ月分)を含む約18万円を支払いました。しかし、娘さんが体調を崩して入居できなくなったため、解約を申し出ました。ですが仲介業者からは「契約は成立済みのため、受け取った金額のうち、清掃費用2万円のみ返還できます。その他は返金できません」と言われました。契約書には、解約時の違約金として家賃1カ月分と記載されていた。鍵も受け取っていないのに、支払ったお金がほとんど返ってきません。自己都合であることはわかっていますが、返してもらえないのでしょうか。
●事例② 退去時に高額な原状回復費用を請求された
2年間居住した賃貸マンションを退去した後、貸主から、ハウスクリーニング費やクロス・天井の貼り替え費、エアコン洗浄費、風呂の鏡のうろこ取りなどで計17万円もの原状回復費用を請求されました。契約時に敷金・礼金はなく、家賃は約12万円で、契約書には原状回復に関する特約もありませんでした。普通に掃除はしており、タバコは吸っておらずペットも飼っていない。クロスは細かいキズがあるため修復するというが、家具を置いた際についたもので、高額な請求に納得できません。
賃貸におけるトラブルが多いことがわかりましたが、実際にはどのようなことに気をつければよいのでしょうか?ここでは契約時、入居中、退去/解約時にわけて紹介します。
●契約時:賃貸借契約書や重要事項説明書をしっかり確認し、疑問点は必ず聞くこと
賃貸契約時に気をつけたいのは、貸主側(大家や仲介業者)から賃貸借契約書や重要事項説明書といった書類へのサインが求められます。成人年齢の人がサインをしたら、契約後に、借主(消費者)に不利な条件が発覚しても、条件の変更は難しいことを念頭に起きましょう。
契約前には、すべての書類の内容をよく確認しましょう。禁止事項、修繕に関する事項、退去する際の費用負担に関する事項は特に注意。「ルームクリーニング費用は全額借主負担」といった特約がないかについて、必ず確認しておきましょう。
貸主側に口頭で契約したい旨を伝えた後で「やっぱりやめたい」と申し出ると、トラブルになることがあります。本当にその賃貸物件を契約するかどうか、各契約書類を読み込んで、検討してから契約するようにしましょう。
また、入居前に、できる限り貸主側と一緒に部屋の現状について確認しましょう。賃貸借に関するトラブルは、退去時の「原状回復」に関することが圧倒的に多いです。入居前からあったキズや汚れ等について写真を撮っておくと、退去時のトラブル防止につながるので、積極的に写真を撮っていきましょう。
●入居中:入居中の不備などについては発見したらすぐに貸主側に連絡・相談すること
契約内容を確認し、晴れて新居に引っ越しても、実際に住んでから見つかる部屋のトラブルもあります。例えば、雨漏りやトイレの水漏れなどは実際に使ってみないとわからないことです。こうした問題を発見したら、すぐに貸主側に連絡相談しましょう。
賃貸物件を使用していくために必要な修繕については、原則、貸主側に修繕の義務があります。知らずに借主が貸主側に無断で修繕を行うと、その内容や費用について貸主側とトラブルになることがあります。
例えば、壁紙にカビが生えていたので、勝手に壁紙をDIYしてしまったり、エアコンをお好みの機種に変更したりすることは問題です。借主自身で修繕できることは、どこまでの範囲かについては、賃貸借契約書に記載されているはずですので、入居前に確認し、自身で行う前に必ず貸主に確認しましょう。賃貸物件はあくまで借りているものであることを意識し、普段からこまめに掃除するなどきれいに使いましょう。
●退去時:精算内容をよく確認し、納得できない点は貸主側に説明を求めましょう
退去時は最もトラブルが起こりやすいので注意が必要です。特に多いのが、「原状回復」の費用を貸主側と借主のどちらが負担するのかということ。
いわゆる経年劣化や、普通に使用する範疇でついてしまったキズなどは、借主が修繕費用を負担する必要はないと考えられます。納得できない費用を請求された場合には、国土交通省が定めている「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考に、貸主側に説明を求めましょう。特に原状回復についてトラブルを防止するには、入居時にできる限り貸主側と一緒に物件の現状を確認し、修繕が必要と思われる箇所の写真を撮るなどして、証拠を残しておくことが大切です。
賃貸物件のトラブルは入居前および契約前の確認が非常に大事だということがわかります。不動産仲介業者などは、なるべく早く契約をしてもらいたいので、契約を促してくることがあります。借りる側も気に入った物件をほかの人に取られまいと、焦って契約してしまうことがあります。しかし、きちんと確認せずに、後で大変な思いはしたくないでしょう。そのためには、内見や引っ越し準備をより早く進めておくことが大切です。
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