次に引っ越すなら、地方への「移住」を検討したい。日本の移住先で人気の地域とは?
近年、都会から離れて暮らす「地方移住」を希望する人たちが増えています。2017年の国土交通白書では、「都会の若者の4人に1人が、地方移住に関心がある」と報告されており、ここ1、2年で実際に地方移住をする人が増えてきました。
かつて地方移住と言えば、定年退職などでリタイアした人たちのセカンドライフとしてのイメージが強かったのですが、最近は、自然豊かなところで子どもを育てたいという家族や、生まれ育った地域の活性化に貢献する仕事がしたいと考える働き盛りの若者など、20~40歳代の人が地方に移住するケースが見られます。そこで、今回は最近人気となっている地方移住の人気都市について紹介します。
働き盛りの若い世代の人たちが地方移住に注目するようになったきっかけは、インターネットの台頭で都心でなくても仕事ができる環境が整ったからとも言われ、人気の移住先も昔に比べると変化が出てきているようです。地方暮らしやU・I・Jターンの支援をしているNPO法人「ふるさと回帰センター」では毎年、地方移住人気都市ランキングを発表しています。
その2019年度ランキングのベスト3は以下のようになりました。
1位 長野県
2位 静岡県
3位 北海道
それでは、なぜこの地域の人気が高いのか、その理由を見ていきましょう。
地方移住の人気ランキングで毎年上位に入る長野県は、なんと言っても、各自治体の移住支援制度が400近くもあることで人気です。「移住コンシェルジュ」の窓口を各市町村に設置し、移住者および二拠点居住者が上手に地域に溶け込むために、仕事のあっせんから子育て相談、補助金制度の紹介まであらゆる相談に無償で応えてくれます。世代別、地域別にさまざまな支援制度が用意されているので、自分に合った移住先が見つかりやすいと言われています。
例えば、IT関連事業の拠点を東京から長野県に呼び込むことに成功した「おためしナガノ」は、最長6カ月間、住居とオフィスがおためし的に無償または格安で提供されます。
須坂市の「移住支援信州須坂モデル」は、東京・銀座で説明会を行うなど積極的な移住者受け入れを行っており、キャリアコンサルタントが就業相談から、生活・子育て環境の相談に応じてくれる上、住まいも空き家バンク担当者に相談ができます。
このように長野県の移住関連施策は非常に充実しています。また、関東や関西圏からも比較的アクセスしやすく、全国屈指の国立自然公園の多さから分かるように自然環境が豊かです。そのため、多くの人が長野県の移住プランを検討しているようです。
静岡県は太平洋に面した温暖な気候と、海と山に挟まれた豊かな自然がありつつ、田舎過ぎず、モダンなライフスタイルも可能なことから地方移住先として人気です。また、地域によっては東京への通勤圏内でもあり、移住の前段階となる二拠点生活を始める人も多くいます。
県によるバックアップ制度も豊富で、東京圏内から移住し、静岡県内の中小企業に就職するか、起業した人に最大100万円を支給してくれる「移住・就業支援制度」(静岡県全土)があるほか、起業家や商店街の空き店舗を利用して開業する人を対象に、リフォーム工事費や家賃の一部などを補助してくれる「起業支援及び空き店舗対策事業補助金」(伊東市)など、さまざまな支援制度が各自治体で実施されています。
静岡県は富士山や伊豆・熱海などの観光地がたくさんあり、新幹線の駅も多いことから、観光業で起業をする人も多数います。
地方移住ランキングで急上昇中なのが、日本屈指の観光地である北海道。かつては冬の厳しさと関東圏から遠いことから、移住先としては敬遠されてきましたが、近年の温暖化も手伝ってか人気が出てきています。人気の理由は、やはり豊富な自然。夏はキャンプ、冬はスキーなどのアウトドアも広大な自然の中で楽しめ、都市圏では考えられないほどの環境の良さから、思い切って北海道に移住する人が増えたと考えられます。
さらに「食の宝庫」というのも人気の秘密。かに、ウニ、いくらといった海の幸から、じゃがいも、とうもろこし、牛乳など、北海道の名産をあげたら枚挙に暇がありません。
北海道では、移住者を募るためのさまざまな施策があり、最大100万円が支給される移住支援金支給対象の求人サイトを運営していたり、道内の各市町村では、移住体験ができる「ちょっと暮らし」を行ったり、移住を考える人が不安を感じないようなイベントを多数企画しています。
このように、各都道府県では独自にさまざまな移住支援を行っていますが、上に挙げた地域のほかに、特徴的な支援制度を持つ自治体もあります。ここでは、ユニークな移住支援制度を紹介します。
●定住して起業をすれば100万円 -和歌山県
和歌山県では、定住の意思がある個人に対して、起業資金を最大100万円支給する「移住者起業補助金」という制度を設けています。
●150万円の住宅購入資金を支給-鹿児島県薩摩川内市
薩摩川内市では、定住することを目的に家を新築もしくは購入する場合に最大で150万円を補助してくれる「定住住宅取得補助金」を支給しています。
●住宅補助金が最大400万円-岩手県葛巻町
U・Iターンをするために葛巻町内で住宅を取得する子育て世帯に対し、最大で400万円の補助金を交付する「子育て世代移住促進住宅取得支援事業」を行っています。
このほかにも、住宅購入補助金に加え、最大20万円まで引っ越し費用も負担してくれる大分市や、出産と子育て支援で有名な岡山県高梁市では、3人目の子どもを出産すると50万円、4人目の出産で100万円を支給するなど、住宅、仕事、子育て、教育といったさまざまな面で支援制度があるので、引っ越しする前にかならず自治体のホームページを参照するようにしましょう。
このように、都心から離れて暮らすだけで、仕事や住宅をあっせんしてくれたり、子育ての補助金が受けられたりと、地方移住は魅力がいっぱいですよね。しかし、慣れていない土地での新生活や、新しい仕事を順調にスタートさせるには、かなりの労力が必要なことも知っておくべきでしょう。
特に、以下のポイントについて考慮してから移住を決めるのが良いでしょう。
●地方に移住することによって年収が下がる可能性
リモートワークが浸透しつつあるとは言え、転職を前提としたU・Iターン組が多いのが事実。地方で就職した場合、給料は都会よりも相対的に低いため、年収のダウンはやむを得ないでしょう。年収は下がるが、物価も下がるという見方もありますが、居住費以外の物価はそれほど全国で差があるわけではないので、収入と支出のバランスに気をつけましょう。
●地域や近所との付き合いが大切に
地方移住で成功する人の多くは、コミュニケーション能力の高い人だと言われています。やはり、困ったときに助けてくれたり、アドバイスをくれたりするのは地元の人です。移住先の生活を円滑にするためにも、地域との関わり、ご近所づきあいはとても大切になるので、積極的に参加しましょう。
●学校や病院などは遠くなり、車が必要に
地方都市では都心のように交通網がしっかりと整備されているわけではありません。スーパーや学校、病院へ行くのにバスや車が必要となるケースも多くなります。自動車の購入資金はもとより、車やバイクによる通勤通学など、時間的な余裕も必要となります。
地方移住にはたくさんの支援制度が用意されているので、とても魅力的に感じた人も多いはず。引っ越すまでにしっかりと準備すれば、きっとストレスの少ないライフスタイルを実現できることでしょう。
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