地球温暖化を防ぐためのエネルギー対策の一貫として、資源エネルギー庁が掲げている「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)」。「2030年までに新築戸建住宅の56%に太陽光発電設備を設置すること」を目標にしているため一軒家の住環境や資産価値が激変すると考えられており、ZEHに対応した一軒家に引っ越しすことを考える人が増えているようです。
そこで、今回はZEHの概要および省エネ住宅に関する補助金などについて紹介します。
経済産業省エネルギー庁が掲げる「ZEH」とは、正式には「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略語で、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味です。
分かりやすく言えば、家庭で節約するエネルギーと、太陽光発電などで創出するエネルギーのバランスを図り、1年間で消費するエネルギー量を実質的にゼロ以下にする家です。「ゼロ以下」というのは、つまりエネルギー創出が使う量を上回ることを意味しており、第一次エネルギーの約9割を輸入に頼っている日本において、エネルギー自給率の低さを少しでも解消する目的もあります。
これを実現するための第一目標は「エネルギーの節約」になります。近年の気候変動にも耐えながら節約するには、家全体の断熱性や設備の効率化を大きく高めることが必要となり、新築住宅を設計する時点から大きな省エネルギーを目指す必要があるのです。
●省エネ
家庭内で使用する電力量や稼働状況、太陽光発電による発電量などを確認する専用のシステム「HEMS(Home Energy Management System)」を設置して管理することで大きな節約が可能となります。また、LED照明や高効率給湯システム、省電力稼働の家電システムなどで極力無駄な電力を省くことを目指します。
●断熱
窓や壁、天井などに高性能な断熱材を用いてエネルギー効率の良い住宅を建設することが、ZEH住宅の重要な要素と言えるでしょう。断熱効果が向上すれば、冷暖房に関するエネルギーを節約できるだけでなく、住環境全体も快適になります。
●創エネ
太陽光発電システムを設置することで、消費するエネルギーよりも、創り出すエネルギーの方が多くなることを目標とします。これを推進することで、国全体のエネルギー自給率が上がる可能性があります。
日本政府としては「2050年までに脱炭素社会の実現」を目指しています。ZEHはその政策に関わる住宅施策の1つに過ぎませんが、新築住宅の建設にはZEHが重要な要素になります。ZEHを新築で建てようとする方も、ZEHの新築建売住宅に引越しようと考えている方も、ZEHのメリットとデメリットについて理解しておくことが大切です。
●ZEH住宅のメリット
1. 光熱費削減につながる
一番のメリットは光熱費の削減です。省エネシステムや断熱の強化によるエネルギーの節約が可能になるだけではなく、太陽光発電による自家発電によって、余った電力を電力会社に売電することで収益も得られます。
2. 災害時用に非常電力を備えられる
売電だけではなく、生み出した電力を蓄電池に蓄えておくことで、停電や自然災害時の非常電力をまかなえます。また、電気自動車の充電にも利用できます。
3. 高く家を売却できる
住宅における省エネの取り組みを評価する指標に、一般社団法人「住宅性能評価・表示協会」のBELSという認証制度があります。ZEH住宅はBELSで高評価を得られるため、資産価値も高く見積もられるので、将来家を高値で売却できると言われています。
●ZEH住宅のデメリット
省エネにも家庭経済にもメリットの高いZEH住宅ですが、デメリットもあります。
1. 天候が悪いと発電量が低くなる
太陽光によって電力を生み出す太陽光発電は晴天時間・日数に依存します。曇りや雨などの天候の悪い日、日照時間の短い冬場は発電量が減少するため、常に安定した電力が得られるわけではないことを念頭に置かなければいけません。また、電力会社への売電価格が近年下がる傾向にあるため、天候次第では思った収益が得られない場合もあります。
2. 設備投資やメンテナンス費用がかかる
太陽光発電システムをはじめとして省エネ機器を設置するには、多額の設備費用が必要です。また、初期投資だけではなく、定期的なメンテナンス費用も必要となるため、住宅維持費は従来の住宅よりも高くつくのが難点となるでしょう。長期的な観点から言えば、光熱費の削減や、ZEH住宅の資産価値が高く見積もられるためコストは回収できると想定されますが、やはり初期費用での負担は否めないでしょう。
ZEH住宅には初期費用が高くつくことがわかりましたが、政府では補助金を用意しているので利用したいところです。
ZEH補助金制度は、経済産業省・国土交通省・環境省の3省連携で行われているため、ZEH住宅の種類によって申請時期や採択方式、補助金額が異なります。まずは3省連携のパンフレットを確認するなど、常に最新情報を把握しておきましょう。ここでは、要点をまとめて紹介します。
●補助金を受け取れる人
・住宅を新築する人
・新築建売住宅を購入する人
●住宅の主な要件
・所有者が常時居住する戸建て専用住宅であること
・登録されたZEHビルダー/プランナーが設計、建築又は販売を行うZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)であること
●住宅種類別の補助額
・ZEH:定額55万円
・ZEH+/次世代ZEH+:定額100万円
・次世代HEMS:定額112万円
ZEH | 高断熱、太陽光発電システム、省エネ設備を導入したエネルギー収支0の住宅 |
---|---|
ZEH+ | ZEHをさらに省エネ化し、電気自動車充電設備などの再生可能エネルギーの自家消費拡大設備等を導入した住宅 |
次世代ZEH+ | ZEH+から、さらに蓄電システム、燃料電池などの再生可能エネルギーの自家消費拡大設備等を導入した住宅 |
次世代HEMS | 世代ZEH+から、さらに太陽光発電エネルギーの自家消費を拡大するために、AI・IoT技術等による最適制御を行うもの |
自然災害や需要過多によるエネルギー供給のひっ迫が起きうる今、中古住宅でも省エネ設備の導入やソーラーパネルを設置するケースが増えてきています。また、電気自動車の普及が見込まれる近い将来、ZEHの形態の住宅が主流になっていくことは容易に予測できるでしょう。そのため、新築を建てる人や、新築住宅を購入して引っ越ししようと考えている人は、ZEH住宅の動向をしっかり確認しておくことをおすすめします。
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