日本の水道水は安全だと、これまで言われてきましたが、河川や地下水のPFAS(ピーファス)汚染が問題になっています。全国各地の調査によって、毎日摂取しても人体への健康被害はないとされる基準値を超える場所があることが明らかになっています。
これから引っ越しを検討するのであれば、その地域の浄水場がどのような調査・活動をしており、問題がないのか自ら知っておく必要がありそうです。
PFAS は、人工的につくられた「有機フッ素化合物」の総称で、1万種類以上が存在するとされています。水や油をはじいて、熱、薬品、紫外線などに対して強い耐性を持つことから、1940年代以降、撥水剤や乳化剤、消火剤・包装材表面加工など、様々な工業製品や、その製造工程で利用されています。代表的な例としては、金属のメッキ加工や、レインコートの撥水加工、スキー用のワックスなどに使われています。
PFASは高い安定性を持つ特性があるため、自然界に放出されるとほとんどが分解されずに残留し続けてしまいます。一部のPFASについては、長期的な体内曝露により人体の健康を損なうリスクが高いことが判明しました。
PFASに汚染された水道水の場合、煮沸消毒してもPFASは除去されないとされています。この場合、活性炭を使っている浄水器を使えばPFASを7~8割以上除去できるとされています。
PFASの環境および健康への影響を考慮し、各国で基準値が設定されています。特に、PFAS の代表とされるPFOA(ピーフォア)やPFOS(ピーフォス)は、がんや免疫異常、生殖・発生への影響が懸念されているため、厳格な規制が求められています。
アメリカ環境保護庁(EPA)では、飲料水中のPFOAとPFOSの基準値を1リットルあたり4ナノグラム(ナノグラムは10億分の1グラム)以下とする基準値を設定。日本では、環境基本法に基づいて、PFOSとPFOAは指定化学物質として指定した上で、水道水中のPFOSとPFOAの合算値を1リットルあたり50ng(ナノグラム)以下とする暫定目標値を設定しています。
2016年に沖縄県が、嘉手納基地周辺の河川でPFASが高濃度で検出されていることを発表し、これを機にPFAS汚染が日本でも大きく注目されました。その後、日本全国で調査が実施され、2022年には横須賀基地の排水から国の基準値を超える高濃度のPFOSとPFOAが検出された例もあります。
ここでは、東京、名古屋、大阪の自治体で実施されている水質検査の状況を紹介。主要都市への引越しを検討している方は、参考にしてみてください。
●東京都の調査結果は?
東京都では、令和3年度から島しょ部を除く都内全域で地下水の水質調査を行ない、令和6年3月に調査を終えました。
調査の結果、文京区、大田区、渋谷区、練馬区、世田谷区、立川市、武蔵野市、青梅市、府中市、調布市、小金井市、日野市、国分寺市、国立市、狛江市、西東京市、武蔵村山市、足立区、台東区、八王子市、小平市の21の自治体で、国の暫定の目標値を上回る値が検出されたとしています。
●名古屋市の調査結果は?
名古屋市の水道水の水源は木曽川です。名古屋市の上下水道局では、春日井浄水場、鍋屋上野浄水場、大治浄水場で定期的な水質検査を行っており、平成30年以降、PFASは暫定目標値を超過して検出されたことはないようです。
●大阪府の調査結果は?
大阪府では令和3年度から府域全域で河川の水質調査を実施しています。結果、枚方市の船橋川・新登橋上流、穂谷川・淀川合流直前、天野川 ・淀川合流直前、吹田市の正雀川・安威川合流直前、大阪府の神崎川・新三国橋、飛鳥川・円明橋、西除川・狭山池合流直前で、それぞれ暫定指針数(50ng/L)を超える数値が観測されています。
いかがでしたか。引っ越し先の河川や地下水がPFASに汚染されていないか、心配になりますよね。その場合は、事前に引越し先の自治体のホームページなどで確認してみるのもおすすめです。もし、万が一、引っ越し先のエリアでPFASが暫定目標値を超過して検出されていた場合は、活性炭を使っている浄水器を使うなどの対策を検討しましょう。
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