近年、全国各地で木造のマンションの竣工が相次いでいます。木造の集合住宅というと大規模な建物ではなくアパートなどの中小規模の建物を想像しますが、「木造のマンション」とはいったいどのようなスタイルの建物で、なぜ注目されているのか。次に引っ越すなら「木造マンションがいい」という時代が来るのでしょうか?
近年、全国各地で木造マンションが増えている背景には、CO2削減問題に関するSDGsへの取り組みがあります。
SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」について、国土交通省は「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」を推進しており、分かりやすく言えば、「木材を大量に使用する大規模建築計画に対して政府が助成金を出す」という事業です。
参考:
国土交通省報道発表資料
例えば、三井不動産、三井ホームグループ、竹中工務店によって2025年竣工の木造オフィスビルが東京都中央区で計画されていますが、これは地上17階という高層ビルです。こんな高層ビルが木造で大丈夫なのかと心配になりますが、ほとんどの物件は耐震・耐火のために鉄筋コンクリートを配したハイブリッド構造となっています。
森林を伐採して木材を作ると木々が減るので、CO2削減にはならないと思われますが、実は木材は燃やさない限り二酸化炭素を内包したままになります。そのため、木造建築を増やすことは、鉄筋コンクリートなど他の工法よりも圧倒的に炭素を貯められ、同時に二酸化炭素の排出を大幅に削減できます。林野庁の「令和元年度森林・林業白書」によると、工法別の住宅1戸当たりの炭素貯蔵量と材料製造時の二酸化炭素排出量を他の工法と比較すると以下のようになります。
●炭素貯蔵量
木造:6トン
鉄骨プレハブ住宅:1.5トン
RC(鉄筋コンクリート)住宅:1.6トン
●材料製造時の二酸化炭素排出量
木造:5.1トン
鉄骨プレハブ住宅:14.7トン
RC(鉄筋コンクリート)住宅:21.8トン
このように脱炭素を推進するのに最適な工法が木造建築ということで現在注目を集めています。
SDGsに関心の高い方にとって、新しい引越先の選択肢となりそうですが、メリットやデメリットについても考えてみましょう。
二酸化炭素排出量を削減できるとして注目を集めている木造マンションですが、木造建築にするメリットはそれだけではありません。以下に木造マンションを建てるメリットについて、列挙します。
●建設費用が抑えられる
木材は鉄骨やRCよりも軽量のため、基礎工事における労力を軽減できることから建設費用を抑えられるというメリットがあります。
●国内林業の活性化につながる
近年、国産木材の利用量が減り、林業の衰退が顕著になっています。国産の木材を使って木造マンションが多く建つことで、日本の森林資産の循環が活発化でき、林業の活性化につながると考えられています。
●体に優しい
木造は木のぬくもりや温かみがあります。また、自然素材なのでシックハウス症候群の原因ともされるホルムアルデヒドの危険性を軽減できるほか、木造ならではの自然な調湿機能や通気性、紫外線の吸収といった人体に優しい点が喜ばれています。
「木の家」と聞いてデメリットなどあるのだろうかと思う人もいるかもしれませんが、ある程度高層のマンションとなるとデメリットもあります。
●耐震・耐火性の問題
木造マンションと言っても基礎の部分や耐震壁などはやはり鉄筋コンクリートの強化部材に頼らざるを得ません。また、木材の割合が増えるほど、耐火性の問題も否めません。もちろん、それらの問題を克服すべく建設会社各社が工夫を凝らしていますが、相対的には鉄筋コンクリートの方が災害に強いと言えるでしょう。
●冷房/暖房の気密性が低い
鉄筋コンクリートのマンションに比べると、通気性が高いだけに気密性が低く、冷房や暖房が効きにくいというのが難点として挙げられます。
●家賃が割高になることも
木造になれば建設費が安くなるため家賃も抑えられると思う人もいるかもしれませんが、国産の木材は輸入木材よりも比較的高いことが多いため、実際には家賃が高くなってしまうことも考えられます。また、中高層マンションなどの場合には、木材の質も吟味され、ある程度高級なマンションとなる可能性もあるため、木造だからといって家賃が下がるとは限りません。
●耐久性の問題
鉄筋やRC構造に比べるとどうしても木材は耐久年数で劣ってしまいます。そのためアパートなどの低層住宅であれば、修繕はそれほど大きな問題とはなりませんが、中高層のマンションとなると修繕費用が高くなる可能性もあります。
いかがでしたか?このように木造マンションにはメリットもデメリットもありますが、注意したいのはやはり木材の利用割合というところでしょう。
冒頭でも紹介したように木造高層建築物の重要な耐性部にはやはり鉄筋コンクリートが使用されており、全体的な木材比率が上がったに過ぎないということが言えます。それでも木材使用量は飛躍的に上がっているため、炭素の貯蔵や二酸化炭素排出に貢献しています。
このように、木材をたくさん使いつつ安全面に配慮された高層マンションやオフィスビルは今後も増えていくことが予想されていますので、新たな引越し先の選択肢として検討してみましょう。
不動産関連情報
- 引越しをする時のことも考えよう。お部屋探しの時に注意したい10のコツ
- 不動産会社選びのポイント
- お部屋をチェックする際に重要なこと
- お部屋探しは住環境も含めて検討しましょう
- 物件(部屋)を契約する際の注意点
- フリーレントに敷金ゼロ?引越し時の初期費用を抑える方法とは?
- 知っておきたい!引越し“専門”用語集
- 分譲賃貸に引越しする際に知っておきたいメリット、デメリット
- 更新料が高いなら引越しも考える?賃貸物件の更新料って払わなければならないもの?
- 引越す前に知っておきたいマンションで暮らす時の基本ルール
- 引越しを考えるなら覚えておこう家具・家電付き住宅のメリット・デメリット
- 新居に引越しする時は要注意!マンション選びをするなら民泊禁止かどうか確認しよう
- 宅配ボックス、床暖房、24時間ゴミ出しも今や普通?引越しするなら、付加価値のある快適なお部屋で暮らしたい
- せっかく引越しするならDIYできる賃貸物件を選びたい
- 広くて快適な引越し先を選ぶなら。「団地賃貸」が1つのキーワード
- マンションの1階に引越しはありか?なしか?メリットとデメリットを考えてみる
- 賃貸物件へ引越しするなら必要です!「入居審査」って何を調べられる?落ちることはあるの?
- 南向きがベスト?北向きは家賃が安い?賃貸物件に引っ越すときに考えたい日当たりのこと
- 引っ越すならインターネット無料がいい?それは本当?今一度、メリット・デメリットを考えてみよう
- 引越しするならできるだけ長く住みたい。賃貸にも広がる「省エネ住宅」
- 引越しするなら景色がいいところに!マンションの最上階に住むメリット&デメリット
- 女性が引越しする時は気をつけて!最低限知っておきたい一人暮らしの防犯対策
- 引越しするなら住んでみたい!?ロフト、メゾネット物件のメリット&デメリット
- 台風の被害状況から見えた、引越し先としてのマンションの選び方
- シェアハウスとどう違う!?引越し先の新しい選択「ソーシャルアパートメント」
- 毎日ピクニックができるから幸せ!?公園近くに引っ越す際に知っておきたいこと
- 消費増税で家の購入や家賃はどうなる!?消費増税前の引越しで知っておきたいこと
- 一人暮らしから同棲やシェアを始めても問題ない?!引越しする前に知っておきたい賃貸契約の正しい知識
- 引越しをきっかけに、物を持たない生活をスタート?「サブスクリプション」サービスで考える新しい暮らし方
- エアコン、パソコン、植物、ウォーターサーバー。これって、引越し業者は普通に運搬してくれるもの?
- キレイにリノベーションしてあるから何も問題なし?リノベーション物件に引越す際に注意したいことまとめ
- 出産を機に新居を見つけてお引越し。新居選びで気をつけたいこと
- 女性の一人暮らし。引越しするなら治安の良い場所を選びたい!
- 次の引越しでいよいよ決断。「一戸建て」と「マンション」。どちらのメリットが多い?
- 引越しするなら自分に合ったところに住みたい!どんどん進化する「コンセプト賃貸」で自分らしい生活を
- 引越しを考えるなら調べておきたい。防災のためのハザードマップ
- 引越しするなら、タワーマンションか、低層マンションか。それぞれのメリット、デメリットとは?
- 引越しする時は気をつけて!寒いマンションと暖かいマンションの見分け方
- 引っ越す時は必ず確認しよう。「旧耐震」「新耐震」の基準について
- 「ベランダ」「バルコニー」「テラス」って何が違うの?引っ越す前に知っておきたい賃貸物件の基礎知識
- 次の引越しでマイホームに住む!一戸建て住宅を建てる前に知っておきたい不動産用語①【家探し編】
- 通勤時間はもはや関係ない?テレワーク(リモートワーク)で変わり始めた引越しの条件
- 次の引越しでマイホームに住む!一戸建て住宅を建てる前に知っておきたい不動産用語②【費用と資金編】
- 次の引越しでマイホームに住む!一戸建て住宅を建てる前に知っておきたい不動産用語③【建築・設計編】
- 次の引越しでいよいよ新居購入。知っておきたい住宅ローンの基礎知識
- 次の引越しでマイホームに住む!一戸建て住宅を建てる前に知っておきたい不動産用語④【間取り&住宅設備編】
- 新しい引越し先にいいかも!1階が店舗になっている賃貸マンションのメリット・デメリットとは?
- 郊外への引越しを考えるなら。特長ある「再生団地」が気になる
- フローリング、クッションフロア、フロアタイル。引越す前に知っておきたい賃貸物件の床材の違いって?
- 戸建てに引っ越すならエネルギーの有効活用がマスト?最近話題のスマートハウスとは?
- マンションに引越すなら知っておきたい。大規模修繕計画のこと
- 入居者が主体となる集合住宅。「コーポラティブハウス」とは?
- 引っ越すならどっち?管理人が常駐するマンション・いないマンション
- 高架下に引越しできる時代が来た!?「高架下賃貸物件」の良いところ、心配なところ
- 次の引越し先は「木造マンション」?今、木のマンションが注目されている理由
- 賃貸借契約の更新通知が来た。これは引越すタイミング?それとも更新?
- 新築一戸建てへのお引越しなら、知っておいたほうがいい「ZEH」とは?
- 事件が起きてからでは遅い!引っ越す前に一軒家の防犯対策をきちんと考える
- 引越しするなら検討したい。憧れのルーフバルコニー付き物件
- 引っ越しするなら、駐車場選びのポイントを知っておきましょう
- オール電化とガス併用。引っ越し先として選ぶならどっちが良い?
- サウナ付き、小商い付き、家庭菜園付き自分の理想を叶えてくれる「コンセプト賃貸」に引っ越したい!
- 家を建てて引越しするなら!コンパクトな平屋が注目される理由
- 結婚を機に新居を購入して引っ越し。知っておきたい「ペアローン」のこと
- 引越しを考えているなら知っておきたい住民トラブルを避けるための物件選び
- 引越しする時に検討したい。電気とガスをまとめるセットプラン
- 「カーシェア」「シェアサイクル」「モビリティシェア」。引っ越すなら移動手段に困らないマンションに住みたい
- マンションから引越す時に考えてみる「マンション投資」のこと
- 引っ越すならどっち? エアコン暖房のマンションか床暖房のマンションか
- 電気代節約につなげるなら「省エネ性能ラベル」を見て引越し先を選ぶ時代が来る
- 賃貸物件のエアコンが故障したら誰が直す?引っ越す時の契約内容の確認が大事
- 「定期借家」「普通借家」って何?引っ越す前に知っておきたい契約の違い
- 中古物件を購入して引越しするなら「瑕疵(かし)保険」の仕組みを知っておこう
- 引越しを検討するなら知っておきたい「液状化現象」のこと
- 六曜や風水を参考にしながら引越しで運気をアップさせる方法
- 引越す前に知っておきたい。家賃値上げに対応する方法
- 引越す際に視野に入れたい。初期費用や家賃をクレジットカード決済するメリット
- 引越す時こそ考えよう。電気代を抑えるために必要なこと
- おもしろい形の集合住宅に引っ越してみたい。「テラスハウス」「タウンハウス」ってどんな共同住宅?
- 引越しする場所の水道水は安心できる?知っておきたいPFAS(ピーファス)汚染のこと
- 引っ越す時は、暑さ対策も考えて!熱帯夜を乗り切るためのマンションの選び方と対策
- 蛍光灯?LED照明? 引越し先を決めるときは省エネを考えて照明をチェック
- 引っ越しを検討しているなら知っておきたい「ZEH-M(ゼッチ・マンション)」のこと