昭和30年代に産声を上げた公団住宅や公営住宅は、いわゆる「団地」と呼ばれ、昭和を象徴する文化の1つとして知られています。1970年代になると、ニュータウンの開発や集合住宅の高層化に伴い団地開発はピークを迎えますが、その後、専有面積の広い民間のマンションが台頭してきたため団地は廃れていきました。
ところが近年、この団地が「DIY型賃貸住宅」や「リノベーション賃貸」といった個性的な賃貸住宅として話題になっています。そこで今回は、引越し先としても注目を集める「団地」の今について紹介します。
同じ集合住宅の中でも団地とマンションとでは大きな違いがあります。
団地は日本住宅公団(現・UR都市機構)による公団住宅、もしくは都道府県や市町村が運営する公営住宅を指します。マンションは民間企業が運営しているので、まずこの点が大きく違います。
また、団地は1950年代から90年代まで供給されてきましたが、1999年に分譲供給がストップしたため、現在では「新築の団地」というのは基本的に存在しません。そのため、築年数が古いということが特徴となっています。また、あまり知られていませんが、「一戸建ての団地」というのも存在します。
賃貸に引越すならやっぱり「新築マンション」という人も多いでしょうが、団地には新築マンションに負けるとも劣らないメリットがあります。団地の賃貸を供給しているUR都市機構では、すべての物件で以下のようなメリットがあると謳っています。
●礼金なし
URでは、賃貸マンションでよく見られる「礼金」が不要です。
●仲介手数料なし
マンションを賃貸するには不動産仲介業者を通じて借りるのが通常ですが、UR賃貸住宅では仲介手数料を請求されることはありません。
●更新料不要
マンションに数年住んでいると更新料という名目で支払いの生じる場合がありますが、URでは更新料を請求されることはありません。
●保証人不要
不動産賃貸業者では家賃の滞納などを防ぐ目的で保証人を用意する必要がありますが、UR賃貸住宅では保証人は必要ありません。
こんなにメリットがあるなら団地に住んでみたい、引っ越し先として検討したいという人も、きっと多いはずです。特にURの物件は団地以外もあるのでチェックしてみましょう。
さまざまなメリットのある団地ですが、老朽化によってなかなか借り手がつきにくいのも事実です。そこで現在では団地をリノベートして、かつての「狭い3DK」から壁をぶち抜いて「広い2LDK」に工事されているものが増えてきました。これなら単身者や新婚カップルなどにもオススメできます。
特に70年代から90年代に建てられた団地はそれほど老朽化も進んでいないため、オシャレな集合住宅へと生まれ変わりつつあります。もちろん、建物全体の耐震補強やエレベーターなど施設の設置などは行われているので、通常のマンションと遜色ない住み心地を実現しているようです。
一般的に賃貸住宅では退去時に「原状回復義務」というものがあり、住む前の状態に戻す必要があります。そのため、壁に釘を打ったり床を変えたりということができません。しかし、この「原状回復義務」というルールを撤廃することで借り手を増やす団地が今増えているのです。
自分らしく部屋をアレンジできるDIY型の団地が増えてきたことで、賃貸希望者が急上昇。DIY型の物件はどうしても築年数が古くなりますが、思い通りにDIYできるなら住んでみたいという人は多いはずです。
無印良品とUR都市機構がスタートした「MUJI UR団地リノベーションプロジェクト」も人気を集めています。「生かす、変える、自由にできる」をコンセプトに、古くなった住まいでも愛着を持って長く丁寧に住みつないでいくことを推し進めています。このプロジェクトで生まれ変わった団地は2013年に「グッドデザイン大賞」を受賞。モダンなデザインに生まれ変わっているというだけではなく、古いものを見直し上手に活用することで工事コストなども抑えられているのが特徴です。
東京・高島平団地や大阪・東豊中第2団地など、東京、神奈川、埼玉、名古屋、京都、大阪、兵庫、福岡でプロジェクトが進行中で今後も増えていく予定です。
団地は今、着々と新たな集合住宅へと生まれ変わりつつあります。昔ながらの良さを残しつつ、自分の好きなようにDIYができたり、アイデア次第で自分らしさが引き立つ素敵なお部屋に作り変えられるというのはとても楽しいですよね。
現在は単身者やカップルに人気のリノベ団地ですが、子育て向きのUR賃貸なども増えてきているので、ファミリーにも広がっていきそうです。
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