ライフスタイルの多様化にともない、個々の生活様式に合った住まいに引っ越したいと考える人が増えてきました。そんな中、自由に設計できる注文住宅のような集合住宅「コーポラティブハウス」という住宅形態がじわじわと人気となっています。
そこで今回は、「コーポラティブハウス」について紹介します。
コーポラティブハウスとは、住宅を取得しようとする人たちが集まって組合やコミュニティを結成し、その組合が事業主となって建てる集合住宅のことです。土地の取得から設計、建設業者の選定、建設まで全ての行程を自分たちの組合が行うので、間取りやデザインなど希望するままに設計できます。いわば注文住宅のマンション、アパート版といったところです。
主な目的は、自分たちが設計した住宅に住むことですが、デベロッパーにかかる費用を削減できるのも目的の1つとなっています。
欧米ではよく見られる住宅形態で、1800年代後半頃より盛んに建てられました。有名なものとしては、ジョン・レノンが住んでいたダコタ・ハウスがあります。アメリカでは集合住宅の形態をコンドミニアム、またはコーポラティブ(cooperative)、略してコープ(coop)と呼ぶのが一般的で、日本のアパートで「コープ○○」と名付けられているのはその名残です。
集まった住民が1つのコミュニティのように土地選びから事業プランを組み立てていくコーポラティブハウス。どのような流れで建てられるのでしょうか?
1.事業企画立案と参加希望者の募集
コーポラティブハウスを企画するには2つのパターンがあります。1つは主に不動産会社がコーポラティブハウス事業を企画し賛同者を募る「コーディネーター主導型」。もう1つは個人同士のつながりから、まずは住民が組合を組織する「住民主導型」です。
集合住宅を建設してスムーズに引っ越しできるのはコーディネーター主導型でしょう。なぜなら、土地の選定や買収などは不動産会社が行った方が早いからです。その土地にコーポラティブハウスを建てる企画を立て、参加者や賛同者を募集していくというパターンが主流といえます。
2.組合の結成
住民主導型の場合はまず組合を結成し、土地探しから行います。コーディネーター主導型は不動産会社が打ち立てた事業企画に賛同した人たちによって「建設組合」を結成します。そして、この組合が主体となってコーポラティブハウスの設計や施工を発注していくことになります。
3.住まいの設計
コーポラティブハウスの建設組合が組織されれば、集合住宅の設計に入ります。自分のライフスタイルに合わせて間取りや壁・床などの内装の材質、各設備のブランドに至るまで、組合で決めた設計会社と相談しながら自由に選んでいきます。また、個々の住宅はもちろんのこと共有部分についても、組合で最適なものを話し合い造っていきます。
4.建設~竣工
建設についても組合で話し合いをして、決まった建設会社が建設します。
自分の思い通りの住まいを実現できるかもしれないコーポラティブハウス。そんなコーポラティブハウスに引っ越すメリットを挙げていきます。
●ライフスタイルに合わせた自由な設計
集合住宅での生活といえば、決められた間取りに合わせて住むもので、自身のライフスタイルに合わせて設計できるマンションはなかなかありませんでした。そのため間取りから浴室・キッチンなどこだわりたい箇所の仕様、壁・床の材質まで、すべてが思うがままというのは嬉しい限りです。
●分譲価格よりも低価格になる傾向
コーポラティブハウスでは、すでに購入者が決まってから計画がスタートするという特性ゆえ、大規模な広告宣伝費やモデルルームの費用といった経費が不要となります。そのため、デベロッパー主導で販売される分譲物件よりも価格を安く抑えることができます。また、土地代、建設費等の事業費がすべて開示されており、住宅価格の透明性も高くなるので、お金をかけるべきところや抑えるべきところなどを考えやすくなり、無駄な経費を削減できます。
●隣人トラブルが起きにくい環境
コーポラティブハウスのコンセプトは「共に住宅を建てる」というところにあります。設計前から居住者による組合を結成し、密なコミュニケーションによって計画が進んでいくため、自然と住民たちは協力しあい、仲良くなれます。引っ越し前に集合住宅の全員と知り合いになれるというのは一般的な分譲住宅にはないメリットといえるでしょう。
●立地の良い土地でも購入可能
一等地に一戸建てを建てるのは非常に多額の費用がかかりますが、土地を共同購入するコーポラティブハウスでは、利便性の高い土地に住宅を持てることが可能になります。
自由な設計で自身のライフスタイルにぴったりの住宅が分譲マンションよりも安いなんて、なんとも夢のようですが、デメリットがないわけではありません。それでは、どんなデメリットがあるのでしょうか。
●完成までに時間がかかる
注文住宅は全般的に時間がかかるものですが、コーポラティブハウスは10~20世帯の集合住宅です。設計の段階から話し合いが始まり、竣工までにかなりの時間が必要となります。そのため、住宅ローンを利用する場合は、引き渡しまでのつなぎ融資が必要になるなど二重払いが発生してしまうケースもあるので注意が必要です。
●意見の不一致によるトラブル
集合住宅であるがゆえ、一戸建ての注文住宅を建てるのと違って、住人の意見がまとまらない場合もあります。集合住宅全体として意見の相違をいかに一つにまとめ上げていくかが重要ですが、これに時間がかかったり、論争になったりする場合もあるでしょう。
●売却における問題
自身のライフスタイルに合った自由設計が特徴のコーポラティブハウスですが、ライフスタイルの大きな変化によって売却する場合には、一般的な分譲住宅よりも難しい場合が出てきます。個人の志向や個性で設計されているため、間取りや材質などに個性が出すぎてしまうとなかなか売却ができない可能性もあります。
いかがでしたか?コーポラティブハウスのメリットやデメリットを見ていくと、ライフスタイルが確立していて、基本的には売却は考えず、長期的な人生設計が整っている人向けにオススメということが分かったと思います。
その分、人生設計の見通しができている方たちにとっては大きな安心感があります。コーポラティブハウスへの引っ越しは、将来の人生設計と合わせてプランを練ることが大切となりそうです。
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