ここ数年で外国人観光客が増えたことから、ホテルなど宿泊施設の予約が取りにくくなりました。そこで、民家やマンションの一室を宿泊施設として活用する「民泊」というサービスが増えてきています。そんな中、民泊の宿泊客と住人とのトラブルが増えているのも事実。そこで今回は引っ越しの際に気になる「民泊物件」について解説します。
民泊とは、個人所有の自宅や別荘の一部または全部、マンションの一室などを宿泊施設として貸し出すこと、または宿泊することを指します。かつては、宿泊料をもらって人を宿泊させる営業には、旅館業登録というものが必要でした。しかし、外国人観光客の増加や空き家・空室問題の増加に伴い、日本政府は使っていないマンションの空室や空き家を宿泊施設として観光客に利用してもらうために、民泊に関する法律を緩和しました。
2018年6月に施行される「住宅宿泊事業法(民泊新法)」では、「届出」さえすれば、旅館業法の許認可がなくても、民泊を運営することが可能となりました。
規制などが緩和され、宿泊料金がホテルよりも格安な物件が多いことから人気が高まっている民泊ですが、宿泊する外国人観光客と住人との間でトラブルが起きていることも多々あるようです。以下に主なトラブルについて紹介します。
●マンションのセキュリティー問題
エントランスがオートロックとなっているセキュリティマンションは珍しくありません。しかし、誰かが民泊を始めることで不特定多数の人が簡単に出入りできるような環境になってしまいます。そのため、マンション全体のセキュリティが甘くなってしまうという懸念があります。せっかく治安面を考慮して防犯性の高いマンションに引っ越してきたのにこれでは意味がありません。
●ゴミ出し問題
普段私たちが当たり前と考えている曜日別のゴミ出しルールも、外国人観光客にとっては関係ありません。民泊のオーナーがゴミ出しのルールを厳しく伝えても守られないケースも多く、迷惑するのは結局住民側ということになります。
●騒音問題
外国人宿泊客が部屋でパーティーなどをすることで、騒音トラブルになることもあります。賃貸マンションの場合、夜10時以降は一般的に楽器や音楽など大きな音を鳴らしてはいけないなどの規約がありますが、外国人観光客としてはただ楽しくパーティーをしていただけと考えていることも多いため、なかなか規制するのが難しい問題のようです。
民泊に関する基礎的なことや問題点について紹介してきましたが、もし引っ越しをお考えの場合なら、できれば民泊を許可しているマンションには引っ越したくないと思うのではないでしょうか。
対応策としては、民泊がどのような形態で運営されているのかを知ることが大切です。民泊には主に3つの形態がありますので、見ていきましょう。
●旅館業法:簡易宿所営業
1つ目はホテルなどと同様に「旅館業法」という法律の下で運営されている民泊です。
旅館業法では、ホテル営業・旅館営業・簡易宿所営業、下宿営業と4つに分類しており、この中の簡易宿所営業が民泊に該当するものです。簡易宿所営業の許認可を得ている場合は、ホテルなどと同様に365日運営できるほか、オンライン仲介サイトでの集客もできるため本格的な運営が可能となります。この場合は、外国人観光客が多く利用できる可能性が高いので、不安がある人は引っ越しを考えているマンションが「簡易宿所営業」の許認可を得ているかどうかを確認してみると良いでしょう。
●特区民泊
特区民泊とは、国家戦略特区に指定されている自治体が条例を定め、都道府県知事が認定した施設にのみ、特例として旅館業法の適用除外を受けられるという仕組みです。つまりは民泊規制の緩和のための試験運用と言ったところです。旅館業法簡易宿所で許認可を受けるよりも認定の手続きが簡易なため、今後も民泊が増えてくる可能性があります。引っ越しの際はあえてこの特区を外すことで民泊トラブルを回避できるでしょう。
東京都大田区、大阪府大阪市、大阪府内の一部地域、福岡県北九州市などが特区に指定されていますが、多くの都市が特区への参入を計画しているので、引っ越しの際は不動産会社などに問い合わせてみましょう。
●住宅宿泊事業法(民泊新法)
2018年6月に施行される「住宅宿泊事業法(民泊新法)」では、都道府県知事に認可されれば、旅館業法の許認可がなくとも民泊の運営が可能となる法律です。ただし、営業日数に制限があり1年間で180日以内となっています。とはいえ、引越した後でも、マンションの一室が民泊となる可能性があります。
住宅宿泊事業法(民泊新法)により、引っ越しするマンションが民泊を運営する可能性が増えてくるわけですが、それに伴い、居住者の生活を守るために「民泊禁止」を掲げるマンションも出てきています。もともとマンションには「管理規約」というマンションを利用するにあたってのルールが大前提にあり、その標準的な規約には「マンションの専有部分は『住宅』として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と規定されています。つまり、住宅を民泊などの宿泊施設として使うことを禁じています。そのため、民泊を運営するにはこの管理規約を改正する必要があります。管理規約は管理組合(オーナーたち)によって決議されますので、引っ越しの際には今後、管理組合や民泊運営への動向についても確認していく必要があるでしょう。
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