引越し先の安全性は大丈夫?
階段や共用部などの安全性を事前にチェックする方法
2021年4月、東京・八王子のアパートで階段が崩落し女性が亡くなるという事故がありました。そのアパートの築年数は8年と浅く、ずさんな工事が原因ということが発覚し、建設会社は業務上過失致死の疑いで警視庁の捜査を受けました。
こういった事故から「自分の引越し先の安全性は大丈夫なのか」と思われる方も多いと思います。悲惨な事故を未然に防ぐにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは引越し先の安全性チェックの方法について紹介します。
賃貸住宅の安全性を保つために定期的に点検作業を行うことが法律で定められています。これを「法定点検」といい、法定点検では主に以下6つの法律に準じた点検が行われています。
【法定点検に関わる法律】
●消防法
●水道法
●建築基準法
●労働安全基準法
●浄化槽法
●電気事業法
これらは管轄省庁が異なりますが、共通しているのは少なくとも年に1度は関連設備を点検し、問題があれば修繕しなければならないと定められている点です。また、国が定めた法律に加え、各自治体で独自の規制を設けているところもあります。
このように、マンションやアパートなどの集合住宅は最低でも年に1度は建物全体が点検を受けているので、基本的には安全だと言えますが、それでも事故が起きてしまう場合があります。それでは、引っ越す際に、どんなところに注意して物件探しをすればいいのでしょうか?
賃貸アパートやマンションへ引っ越す際に気になるのが「築年数」です。やはり築年数が古いと建物や設備が劣化していると感じてしまいます。しかし、アパートやマンションなどでは上記の通り、法定点検を年に1度以上行っているほか、管理会社によって適宜、清掃・補修されています。そのため、築年数だけを基準に引越し先を選ぶのは得策とは言えません。そこで、築年数が古い物件を選ぶ時のポイントについてまとめてみました。
●築年数よりもメンテナンス体制を確かめる
築年数の古い物件には、家賃が安くなるというメリットがありますが、その反面、メンテナンスが疎かになっていると思われがちです。しかし、メンテナンス状況については、自分の目で見ないとわからないことが多々あるものです。
例えば、築年数が浅くてもロビーや集合ポストの清掃が行き届いていない場合やエレベーターの定期点検シールの無い場合は要注意です。内見時には、部屋の内装のキズや汚れ、床のきしみ具合や水回りの清潔感などもチェックすべきポイントです。
また、キッチンや風呂場の蛇口をひねってみて、きれいな水がすぐ出る場合は貯水槽の管理が行き届いていると言えます。たとえ築年数が古くてもメンテナンスが行き届いていればリスクは少ないといえるでしょう。
●同じ築年数の物件を見て比較する
築年数の古い物件を見る際には、同じ築年数の物件を複数内見して比較するというのもポイントになります。特に外壁。さきほどのロビーや集合ポストの清掃と同様、外壁もその建物の管理体制を見るポイントとなるでしょう。ひび割れの有無、またそれを修繕しているかどうかについて、同じ築年数の物件と比較してみると良いでしょう。
マンションやアパートなどの賃貸住宅は、大家さんや業者によって管理されているため概ね安全と言えますが、階段からの転落、高所からの落下、室内での転倒といった危険性がまったくないとは限りません。
意外かもしれませんが、建物内で起きる死亡事故は多く発生しています。2017年の厚生労働省の発表によれば、マンションを含む建物内での死亡事故は全国で3614件、実に火災の5倍以上、自動車事故の死者数の約8割に相当する数でした。
それでは、これらの危険を回避するためにはどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
以下のチェックポイントは国土交通省の「建物事故ナレッジベース」に掲載されたものの抜粋です。ご自身が住んでいるマンションなどでチェックしてみましょう。
●階段の手すりがぐらついたり、はずれていたりしないか
●外廊下やベランダ、窓際に子どもが登れるような物が置かれていないか
●子どもが高いところで遊べる場所がないか
●床に穴や溝、浮きや凹み、小さな段差はないか
●夜間に暗くて見えにくいところはないか
●廊下や階段に物が置かれていないか
冒頭のような悲惨な事故を防ぐには管理会社だけではなく、住民も目を光らせることが大切です。ずさんな工事で作られた建物は劣化も早いので、築年数だけで物件を選んだりせず、メンテナンス体制についても入居前にしっかりとチェックしましょう。